先日、外出したときに、なんとなくシューズショップに立ち寄ってみました。(写真はそのときに買ったものではありませんが)
その店内で、私の耳には「ん??」と思う言葉が聞こえてきました。
そのお店は、全国展開しているシューズチェーン店です。オンラインショップもあるらしく、店内でその案内をしていました。その案内の中で、こういうことを言っていたんです。
「オンラインショップでご注文の商品は、店頭でのお受け取りも可能です」
「お受け取りの際、ご注文の商品のお試しも可能です」
一見すると、何が気になるのか、わからない方もいるかもしれません。
書いた文章を読むと、とても自然だからです。
でも、これが店内で、音声だけで流れてきたことを想像してみてください。
「お受け取りも可能です」
「お試しも可能です」
これ、間違いではないのですが、私にはとっても違和感があるんです。だって、音声で流すなら、同じ意味でも
「お受け取りできます」または「お受け取りいただけます」
「お試しできます」または「お試しいただけます」
の方が、聞きやすいと思うから。
実は、このシューズチェーンの店内放送だけではなく、最近、ラジオなどでも
「○○が可能です」とか「△△が可能」
という言い方をしているのをよく聞くようになりました。
例えば、ラジオCМで「○○のご購入が可能」という感じです。
それを言うなら「○○をご購入いただけます」の方が、
耳で聞いてわかりやすいと思うのですが。
なんで、私がこんなことを気にするのかというと、
私は以前、テレビ局のニュース番組で放送に使う原稿を書いていたからです。
まだ若くて不慣れだったころは、よく上司から
「耳で聞いてわかる原稿を書け!」と叱られていたのです。
テレビのニュースというのは、アナウンサーが読む原稿と映像の組み合わせです。
映像は「目で見る」ものなので、テロップで漢字が出てきてもわかりますが、
アナウンサーが読む原稿は「耳で聞く」というより、映像を見ながら「聞き流す」ので、
スッと耳に入って、意味がわからなければなりません。
例えば、先ほどの「可能」という言葉は、
耳で聞くと「カノウ」です。
「カノウ」という言葉には
何かができるという意味の「可能」
ケガや病気などで使う「化膿」
人の名前なら「加納」や「狩野」などがあります。
このように、耳で聞くと「カノウ」は複数の意味を持ちますが、
「可能」と言いたいのなら、「○○できる」と言い換えることができます。
これが「耳で聞いてわかる文章」です。
なぜ最近「○○が可能」という言い方が流行って(?)いるのかわかりませんが、
日本語には、ひらがなの言葉で言い換えができる、漢字の言葉がたくさんあります。
耳で聞く原稿を書くコピーライターさんや広告業界のみなさま、
ひらがなの日本語を活用してみてはいかがでしょうか。
きっと、もっと伝わりやすい原稿ができると思います。