先日、SNSでとある作家さんが書いた本の一節が紹介されていました。
「書くために考えるのではなく、考えるために書く」
パッと見は、え?逆じゃないの?と思うのですが、ライターである私はこれがとてもよくわかります。
私の仕事は、取材先からお話を聞いて、そのお話を文章にすることが多いです。もちろん、取材に行く前には、どんな質問をして、どんな内容を引き出そうかと考えます。
だから、取材の前は「書くために考える」ということになります。
けれども、取材が終わって、いよいよ書く段階になると、とにかく「考えるよりも書く」だなぁ、と思うのです。
聞いてきた話を、まずは文字に起こす。耳で聞いてきた「聴覚の記憶」って、結構あいまいなので、目で見る「視覚の記憶」にするんですね。
そうすると「ああ、そういえばあのときはこんなことを仰っていた。でも、今回の原稿には必要ない部分かもしれない」「あれ?現場で聞いた時にはあまり重要に聞こえなかったけど、実はこの部分はとっても重要だな」のような感じで、だんだんと考えが(というか原稿が)まとまっていくんです。
長年、ライターという仕事をしていますが、これは自分でも不思議だなぁと思います。
……ということを書きながら、このブログも考えをまとめています。
実は、ちょっとした事情があって、しばらくブログをお休みしていたのですが、再開することにしました。
ピアニストは1日練習を休むと1週間以上の遅れになる、というようなことを聞いたことがありますが、ライターもそれと同じ。やっぱり書かないと書けなくなるし、書けないと考えなくなります。
ひょっとしたら冒頭の「考えるために書く」って、そういうことなのかもしれないな、と思っています。