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比べれば、わかる。

先日、ビアホールで「飲み比べセット」というのを飲みました。そのときの写真です。

 

パッと見、左のグラスの方が少なく見えますが、実は運ばれてきたときには同じようにグラスのふちまで泡で満たされていました。写真を撮っている短い間に、左のグラスは泡がどんどん消えていったんです。

 

でもこれ、実は右も左も同じ種類のビールです。何が違うのかというと、サーバーと注ぎ方が違うんですって。左はこのお店で通常使っているサーバーから、普段通りに注いだもの。右は細かな泡が出るサーバーから注いだものです。

 

どちらもおいしかったんですけど、あえて言うなら、私は右の方が好きでした。細かな泡の口当たりがよかったのと、細かな泡のおかげか液体の泡が抜けるのがゆっくりで、左のものよりも長い時間、シュワシュワしてました。

 

でもね、この違いって、こうして同時に出てきたからわかると思うんですよ。もし、別々に出てきたら、きっとわからない。並べて比べたから、わかるんですよね。

 

……という体験をして思い出したことがあります(前置きが長くてすみません)。以前、とある方から、こんなご相談をいただきました。「既定の文字量があるから文章を短くしたいのに、自分で書くとあれもこれも書きたくなって、短くできない」というのです。

 

ライターという仕事をしている私も、そういうことがよくあります。取材した内容がおもしろすぎて、ご指定いただいた文字数に入らない、ということが。

 

そういうときはどうするのかというと、とりあえず、全部書きます。書きたいと思っていることを全て書いて、それから指定の文字数まで削ります。

 

「えっ?せっかく書いたのに、削っちゃうの?」と思うかもしれませんが、そうなんです。私の場合は、最初から指定の文字数でおさめようとすると、結局うまくまとまらなくて、かえって時間がかかってしまいます。だから、とりあえず全部書く。

 

そうすると、何がいいのかというと、「あ、これは要らないかも」というのが見えてくるんです。

 

頭の中で考えているだけのときは「あれもこれもおもしろいし、必要だから……」と思うのですが、全て書き出してみると、意外とそうでもない。これはおそらく「書き出す」という行為によって、頭の中のものが「見える化」されるからだと思います。

 

見えると、比べられますよね。比べると、違いがわかる。だから「あ、これは要らないな」と削ることができる。

 

これを繰り返して指定の文字数にする、というのが私が文章を短くしたいときにやっている方法です。非効率かもしれませんが、こうすることで短くともギュギュっと凝縮した文章ができると自負しています。

 

「文字数を減らしたいのに……」と悩んでいる方がいたら、めんどくさがらずに全て書き出してみること。書いて、視覚化して、比べることで見えてくることがたくさんありますよ。