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公文書でリアルに感じる沖縄の復帰

東京・竹橋にある国立公文書館で開催中の「公文書でたどる沖縄の日本復帰」に行ってきました。

国立公文書館は、竹橋駅から徒歩で5分くらい。国立近代美術館の隣にあります。近代美術館には行ったことがあるけど、お隣にこういう施設があるとは知りませんでした。

企画展「公文書でたどる沖縄の日本復帰」は入場無料です。

私は公文書館に入ったこと自体が初めてだったので、「公文書でたどる」ってどんな感じなんだろう?と思っていたのですが、展示会場はあまり広くはなく、ガラス越しにさまざまな資料を見ることができました。

 こちらは、1972年5月15日の「沖縄復帰記念式典」で、当時の佐藤榮作首相が読んだ式辞。とても読みやすい大きさの筆文字で書かれています。

そしてこちらは、その佐藤首相が1965年、沖縄返還交渉へ向けて動くために、まだアメリカ統治下だった沖縄を訪れたときに書いた日記。万年筆による直筆です。

赤い矢印の部分には、沖縄では日の丸で出迎えられたことや、到着のあいさつ、記者会見なども満足のいくものだったと記されているそうです。

そしてこちらが、復帰前年の1971年6月に調印されたいわゆる「沖縄返還協定」の公布原本です。

当時の天皇陛下のお名前や、佐藤首相のサインがあります。

右側に少し英文が見えますが、この条約の英訳だそうです。

こちらは、復帰後に行われた通貨交換に関する資料。写真では、琉球銀行に長蛇の列ができています。沖縄はそれまでアメリカ統治下でしたから、ドルを使っていました。それを日本円に交換するところですね。

この資料には「1ドル 305円」と書いてあります。

実は復帰が正式に決まったとき(返還協定が結ばれた1971年6月)には「1ドル 360円」の固定相場制でした。それなのに、その後の世界的な通貨相場の混乱により、復帰の1972年5月には305円に……。ひどいですね!!

こちらは、復帰後の沖縄振興に関する資料です。

中小企業の振興に関するもので、中でも一例として「沖縄そば(生めん)製造業」が取り上げられていました。

これは1978年に農林省(現在の農水省)で作られた資料です。

赤い矢印のところに「沖縄県特有の沖縄そばについて……」という記述があります。沖縄そばがいかに県民に愛されているか、供給の見通しなどが数字で書かれています。

当時はパソコンなんてありませんから、全て手書き。ところどころに書き直したあとも見えますね。

それにしても、なんて読みやすくて美しい手書き文字なんでしょう。当時の職員さんは、みんなこんなに美文字を書けたのかしら。

こちらは、上の資料によって、沖縄そば(生めん)製造業が中小企業の近代化計画の指定業種に決定したという旨の資料です。

こちらも手書きで、そしてハンコがいっぱいですね。一番下に名前がある「めん類 羽鳥」さんって、どんな人だったんだろう。きっと、とても几帳面な方だったんじゃないかしら……。

 

この他にも、沖縄戦からアメリカ統治下、そして復帰へ至る沖縄に関する資料がたくさん展示されていました。

「国の公文書」というと、ものすごく難しい資料を想像していましたが、その多くが手書きであるためか、とても人間くさい感じがしました。

 

 

沖縄の日本復帰って、新聞やテレビを通じて、当時の様子を知ることくらいしかできなかったけれど、こうしてナマの資料を見ると、とてもリアルに感じましたよ。

 

国立公文書館には物販コーナーがあって、今回の企画展では図録(800円)の他、なんと返還協定の複製(400円)を買うことができます。

 

こちらが、その沖縄返還協定。複製とわかっていても、ちょっとドキドキします。

協定の中身、条約です。ほ、ほんものだ……。

原本と同じように、条約を英訳したものもちゃんと複製されています。照らし合わせて読んでみようと思います。

東京・竹橋にある国立公文書館で開催中の「公文書でたどる沖縄の日本復帰」は6月19日までで、土日も開館。入場無料です。

 

沖縄人はもちろん、お仕事で沖縄に関係のある方、沖縄好きの方などなど、ぜひみなさんご覧になってください。きっとそれぞれに感じることがあると思います。