以前、とあるバーで飲んでいたら、私がライターという仕事をしていることに興味を持った方から、こんなことを聞かれました。
「ボキャブラリーって、どうやって増やせばいいの？」
私はちょっと考えてから「目の前のことを言葉にするといいですよ」と答えました。目の前にあることを言葉にするというのは、例えば、この写真を見て、見たままを描写すること。こんな感じに…。
「透明なタンブラー形のグラスに、紫色のカクテルが入っており、氷とくし形に切ったレモンが浮かんでいる。右端には、赤いストローが差してある。
紫色のカクテルといっても、全てがその色なのではなく、上から3分の2くらいからグラデーションになっており、徐々に透明になっていく。真下は完全な透明だ。一体、どんな味がするのだろう」
…といった具合です。自分でやるとなると、ちょっとむずかしいですかね？「目の前にあることを言葉にしてください」と言われても、簡単なようで、実は意外とすぐに表現できるわけではないかもしれません。実は、私の場合は練習の賜物で、20代の頃に先輩からさんざん叩き込まれたのです。あのときは、大変だったなぁ(笑)。
おそらく、私に「ボキャブラリーを増やすには、どうすれば？」と聞いた方は、難しい言葉を覚えたいわけではないと思うんです。いろんな言い回しができるようになりたい、もしくはいろんな表現ができるようになりたいということなのでしょう。
ボキャブラリーを増やすためにいいと言われるのは「本を読むこと」で、好きな本を読んで、その作家が使っている表現方法を自然に覚えるのが手段のひとつ。なのですが、その方の話を聞く限り、あまり本好きには思えませんでした（失礼）。彼女のように、読書が苦手な人も少なくないし、読書の時間がないという人もいるでしょう。
そういう方は、頭で覚えようとするだけではなく、「アウトプット」することをおすすめします。今、まさに私がブログを書いているように、文章を綴るのでもいいし、１人で家にいる時に、目の前にあることを言葉にして言ってみるのでもいいです。
それから、コロナ禍が落ち着いたら、ぜひやってみてほしいこと。友だちと飲みながら「目の前にあることを言葉にするゲーム」をやるのも楽しいと思います。やってみると案外できないから、聞いている方は「意味がわからない！」となって、大笑いできるはず。
私はライターという仕事をしているから、ボキャブラリーが豊富な感じがすると思われていますが、実は、そうでもないです。確かに本は好きだから、一般の方よりも多く読んでいるかもしれないけれど、難しい言葉は、今でも仕事をしつつ、調べながら書いているんです。
読書も言葉を調べることもインプットで、インプットだけではあまり覚えないと思います。インプットしたことを覚えているのは、文章を書くというアウトプットをしているから。そういう意味では、私たちのライターの仕事は毎日、表現のインプットとアウトプットを繰り返して、ボキャブラリーを増やしているのだと思います。