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「教えること」もプレゼンになる

以前、とあるものづくり企業へ取材にいったときのことです。その会社の社長さんに、今後の課題をうかがったところ「技術の継承」とおっしゃっていました。

 

その社長さん曰く、「今は見て覚えろ、という時代ではない。かといって、職人の技術は映像やマニュアルに残せるものではない」というのです。

 

たしかにそうだなぁ、と思いました。

 

たとえば、手づくりガラスなどの場合は、熱でドロドロに溶けたガラスを、職人さんが長い棒の先に丸めて取り、それを吹いて形をつくります。その息の強さや手さばきで、ガラスの形や厚みが決まると聞いたことがあります。

 

でも、人間の息の強さなんて、映像にもマニュアルにもできませんよね。

 

こうした「技術の継承」の問題は、この会社に限ったことではないと思います。

 

前述の社長さんがおっしゃっていたように今は「先輩を見て覚えろ」という時代ではありません。でも、映像やマニュアルにもできない。そういうとき、必要になるのが「教える言葉」だと思うんですね。

 

誰かに技術を教えられる人というのは「どうやってそんなことができるの?」と聞かれたとき、言葉で技術を伝えることができる人だと思います。自分しかわからないような繊細なニュアンスを、何かにたとえて、自分以外の人も理解できるように伝えられる人。

 

つまり、これからは後輩に何かを教えるときも、ある意味ではプレゼンみたいになるんじゃないかな……。あのものづくり企業の社長さんの言葉を聞いて、そんなことを考えた取材なのでした。