以前、家族経営の会社さんの社史を本にする、というお仕事をご依頼いただいたことがあります。
ひとくちに家族経営といっても、規模はさまざまですが、その会社さんは家族とパートさんが数人いるだけの、小さな会社です。だから「会社の歴史=家族の歴史」のような感じでした。
その社史をつくりたいと仰ったのは現在の社長さんで、40代の方です。なぜ、社史をまとめようと思ったのかと聞くと「70代の母が元気なうちに、創業者である祖父や祖母の話を聞いておきたかったから」というんですね。
その理由を聞いて、私は「なるほど~」と思いました。
デジタルで何でも記録できる現在と違って、アナログ時代のものは改めてコンテンツ化しないと、いざというときに必要な情報を見ることができません。昔は記録するカメラやフィルムが高かったですから、写真や映像は特別なときにしか撮っていないはずです。特別なときというのは、たいてい「○○記念日」とか「○○受賞記念」とかいうお祝いごとで、苦しかったときに残した記録などはあまりないのではないでしょうか。
でも、ちょっと考えてみてください。現代に生きる私たちが今、昔の人の知恵を借りたいと思うのは、「自分が苦しいとき」ではありませんか?
だから「アナログ世代は苦しいときをどのように乗り切ったのか」というお話を聞いて、デジタル情報にする必要があると、私は思います。
前述の家族経営の会社の社史ができあがったとき、依頼主の社長さんからとても感謝されました。「この社史をまとめていなかったら、祖父や祖母が苦労してやったいろんなことは、なかったことになっていたかもしれません。ありがとうございました」
アナタの会社で積み重ねられてきた知恵も「なかったこと」になりかねません。アナログ世代がお元気なうちに、自社の歴史や苦労話(ここ大事。良かったことだけじゃなくて、悪かったことも聞く!)をできるだけ具体的に聞いて、記録しておくことをおすすめします。写真だけでは伝えられない、おもしろいお話がたくさん出てくると思いますよ。