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沖縄とムスリムの留学生

東京、特に浅草あたりを歩くと、アジア系の外国人観光客をたくさん見かけるようになりました。

 

中には「ヒジャブ」というスカーフのようなものを被った、ムスリム(イスラム教徒)の人も少なくありません。ムスリムの方々は、宗教上の理由から、食や生活にさまざまな決まりがあります。

 

それで、思い出したことがあります。

 

私が通っていた沖縄の琉球大学では、私が学生だった1990年代以前から、すでに東南アジアの留学生を受け入れていました。私が住んでいた学生寮にも、インドネシアからの留学生がいました。

 

今思えば、彼女はムスリムでした。当時、私はまだ大学1年生か2年生だったと思います。学生寮の先輩から「彼女は宗教上の理由から、いろいろと私たちと違う生活をしなければならない」ということを教えてもらいました。

 

その違いは、大きく2つ。ひとつは、1日に何度か「お祈りの時間」があることで、その時間には決して邪魔をしないこと。もうひとつは、食生活に制限があり、特に豚肉とアルコールは厳禁だということです。

 

豚肉とアルコールが厳禁って?!沖縄では考えられません!だって、沖縄料理と泡盛とオリオンビールの国ですよ?!

 

沖縄料理の中心は豚肉。「豚は鳴き声以外は全部食べる」と言われるほど、頭から尻尾まで食べるのが沖縄では当たり前です。けれど、その沖縄で生活するのに、豚肉が食べられないなんて…。

 

と思ったのですが、当時を思い出してみると、大学の近くにあったスーパーに、不思議なマークの付いたお肉などの食材が売っていたのです。

 

その不思議なマークというのが、アラビア語で書かれた「ハラール」というマークでした。これは簡単に言うと、さまざまな食の制限を持つイスラム教の人たちでも、安心して食べられるものだよ、というマークです。

 

ムスリムの人たちは豚肉は食べられないけれど、野菜はもちろん、鶏肉やお魚は食べることができます。私たちと一緒に住んでいたムスリムの留学生さんも、豚肉以外の食材を使って、上手に料理を作っていました。

 

今、沖縄にも多くの外国人観光客が訪れています。特に多いのは台湾や中国の人だそうですが、マレーシアやインドネシアなど、ムスリムが多い国からも沖縄に来る人が増えているそうです。沖縄観光コンベンションビューローでは「ムスリムおもてなし」というサイトを作り、ムスリムの人たちに対応するための情報を公開しています。

 

外国人観光客が増えるずっと前から、留学生など身近な人を通じて、ムスリムに対応してきた沖縄。豚肉文化だけど、彼らにもやさしい島であると思います。