「沖縄のことを書けばいいのに」
ライターになってから、いろいろな方にこう言われてきました。でも、あまり書いてきませんでした。「書けなかった」と言った方がいいかもしれません。
「沖縄のことを書く」といっても、正直、何を書けばいいのかわからなかったからです。
本土の人にとって(というか、私も本土の出身なのですが…)「沖縄のこと」といえば、観光、基地問題、沖縄戦など、いくつかのカテゴリーが思い浮かぶでしょう。
でも、沖縄に15年も住んで「シマナイチャー」といわれ、その上マスコミで仕事をしていた私は、それらについて浅く広く、中途半端に知りすぎてしまった。だから、それぞれについて専門家や当事者がいることは知っているので、「そのテーマは私が書くべきことじゃない」と勝手に思っていました。
それでも「沖縄のことを書こう」と思ったのには、大きなきっかけがあります。
先日、東京・荻窪にある本屋「Title」で、沖縄について書いた本の著者2名によるトークイベントがありました。ひとりは「はじめての沖縄」の著者で社会学者の岸政彦さん、もうひとりは「沖縄アンダーグラウンド」の著者でノンフィクションライターの藤井誠二さんです。
このイベントの中で岸さんが「沖縄について詳しくなればなるほど、何も言えなくなる」と仰ったんです。
私は、その言葉にとても共感しました。そう、私もまさに「詳しすぎるから、何を書いていいのかわからない」からです。
けれど、お2人のお話を聞くうちに、「それぞれの沖縄」があってもいいのではないか、と思うようになりました。岸さんは社会学者としての沖縄を書いているし、藤井さんはノンフィクションライターとしての沖縄を書いている。だったら、シマナイチャーとしての私が書く沖縄の話があってもいいのではないかと。
「沖縄本」といわれるジャンルはすでにあって、その中には「ナイチャー」が書いたものもあります。けれど、それがどうした!それは、その人が書いた沖縄であって、私が書いた沖縄ではないのです。
沖縄の何について書くのかは、まだ決めていません。でも幸いにも、今はこうして「ブログ」という便利なものがあって、書くことを「積み重ねる」ことができます。これから少しずつ、その時々に思う「沖縄」のことを書いて、それを積み重ねたい。いつの日か「シマナイチャーが書いた沖縄本」にすることを夢見て!!