先日、渋谷へ向かう電車内に、大学生と思しき7~8人のグループがいた。男女比が6:4くらいで男性の方が多く、カップルが4組集まったという感じではないらしい。
彼らが電車に乗ってきたのは、夜9時前くらいだったと思う。すでに少し飲んできて次の場所へ移るのか、はたまたこれから飲みに行くのでウキウキしているのか、やたらとテンションが高くて、みんなで楽しそうにおしゃべりしている。
若者が7~8人もいるわけだから、それなりに元気で声も大きい。そういう人たちが電車の中にいると、「うるさいなぁ…」とイラっとするのが、これまでの私であった。
しかし、その時は、そうは思わなかった。むしろ、微笑ましいとすら思った。理由は2つある。
ひとつは、7~8人で「どの店に行く?」「どんだけ飲むつもり~?」とはしゃいでいる姿を見て、「若者もまだまだ飲めるじゃん」と、ちょっとうれしくなったのである。若者のアルコール離れ、などと言われて久しいけれど、自他共に認める「のんべえ」で、飲食店経営者の知り合いが多いオネエサン(私のことね)としては、キミたちのように楽しく飲みに行く若者を見ると、喜ばしい限りなのですよ。
そして、もうひとつの理由は、この若者グループの誰もスマホをいじっていなかったことだ。
私はこのところ、ほぼ毎日ブログを書いているので、そのネタを探すため、電車内で人間観察をしていることがよくある。ご存知のように電車内では、朝でも昼でも夜でも、一番多いのがスマホを見ている人たちだ。
スマホを使ってゲームをしているのか、本や雑誌を読んでいるのか、動画を見ているのかはわからない。人それぞれ、使い方は違うのかも知れないけれど、とにかく多くの人が下を向いて、時には眉間にシワを寄せて、スマホに集中している。
スマホを見ているのは、ひとりの乗客ばかりではない。カップルも夫婦も親子も、小学生らしいお友だち同士も、ガタイのいいスポーツチームのオニイサンたちも、みんなスマホに夢中だ。スマホを見ていないのは、スマホに興味のない60代以上のオバサマと、競馬新聞を広げたオジサマと、外国人観光客くらいである。
いつもひとりで電車に乗る(電車だけじゃなくて、何をやるのもたいていひとりだ)私は、そんな光景を見ていると、「せっかく隣に家族や友人がいるのに、コミュニケーションとらないのかな?」と思ってしまう。余計なお世話といわれれば、そうなのだけれど。
だから、前述の7~8人の若者グループがスマホを見ず、リアルな顔をつき合わせておしゃべりをしているのを見て、オネエサンとしてはちょっとホッとしたのですよ。「ああ、この若者たちは、ちゃんとコミュニケーションとれるんだな」と。
日本人はもともと、コミュニケーション能力が低いといわれている。表情や身振り手振りが少なく、声が小さめで、発音も明瞭でない人が多い。個人的には、スマホがそれを助長してしまっていると思う。だって、電車の中なんて、肌が触れ合うくらい近くに家族や友人がいるのに、目も合わせないし、おしゃべりもしないのを当たり前に思っているわけだからね。
あの若者グループたちは、電車が渋谷駅に着くと、電車の中にいた時よりも賑やかにおしゃべりをしながら、夜の街へと消えて行った。きっと、飲みながらもっともっと楽しい話ができたのに違いない。