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結果ではなく「過程」がネタ

本でも記事でも映像でも、その構成は「起承転結」や「序破急」といわれる。

 

「起」や「序」は文章や映像のスタートで、読者や視聴者の興味を引くこと。そして、「結」や「急」は、いわばオチだ。

 

私の場合、誰かを取材して、その内容を原稿にすることが多い。特に、現在は成功している中小企業などの代表者から、これまでの苦労や困難、その困難の乗り越え方を伺うことがほとんどだ。

 

そういう原稿の場合には、「序」で現在の成功した姿を伝え、「破」で困難とその乗り越え方を伝え、「急」で今後のことや未来のことを伝える。はじめと終わりはもちろんのこと、「破」という真ん中の部分が、かなり重要だ。

 

なぜなら、この「破」の部分、つまり「困難をどう乗り越えたのか」が、読者にアイデアと共感を与える大事なコンテンツだからである。

 

私は取材でたくさんの方にお会いしているが、成功している人はたいてい、当時の苦労をどうやって乗り越えたのか、細かくは記録していないことが多い。当時の数字や写真などはあっても、苦労した時のことはイヤなことが多いはずなので、できれば忘れてしまいたいと思っている人もいる。

 

けれど、読者にとっては、それが一番知りたいところだと思う。今、成功している人が、どうやって困難を乗り越えて、今に至っているのか。

 

だから、「どうやって」を詳しく聞き出し、文章にするのが、私の役目だ。当事者の元に残っている記録を頼りに、当時の記憶を掘り起こしてもらう。取材の現場では、そのための質問をする。

 

記憶を掘り起こす際、詳細を思い出すきっかけとなるのが「視覚化されたもの」である。当時の写真、日記、メモはもちろん、当時のものではなくても、「今書いたメモ」でもいい。「当時はこんなことがあった」というのを、簡単な箇条書きにするのだ。「○○さんに会う」「△△から□□を購入」などでいい。

 

不思議なことに、当事者が当初は「詳細は覚えていない」と言ったことでも、「視覚化された何か」があると、「ああ、そういえば思い出した」と詳細な話をし始めてくれる。そして、その答えがたいていは「いいネタ」となることが多い。

 

いろいろなビジネスでは「結果がすべて」と言われることがある。でも、取材をする、原稿を書くという仕事においては、結果だけではなく、その「過程」が重要だと、私はいつも思っている。