いつだったか、飲み友だちから言われたことがある。
「旅行なんて、コスパ悪いよ。グーグルマップがあれば、世界中どこにでも行けるんだから」
正直、私は啞然とした。
この友人曰く、リアルな旅行は新幹線や飛行機に乗ったり、歩いたり、時には走ったり、重い荷物を持ったり、知らない街でいろんなことが起きたりすることが「疲れるからイヤ」なのだそうだ。
だから、その街の風景を見るだけなら、グーグルマップで旅をすればいいだろうと、そう言うのである。
私は取材をして原稿を書くというライターだから、「現場に行く」ということが、仕事の大前提になっている。その現場に行くまでに、何時間かかろうが、運賃がいくらかかろうが、それは当然のコストだ。
では、なぜ現場へ行くのか?
それは、現場に行かなければわからないことがたくさんあるからだ。
例えば、上の写真は私が以前、出張で沖縄へ行った際に立ち寄った場所だ。那覇市にある「波上宮(なみのうえぐう)」という神社のすぐ近くにある展望台のような場所で、眼下に港を見下ろすことができる。高台になっているので、少し階段を上がらなくてはならないが、木陰に入れば、海から吹き上げてくる風が心地いい。
・・・と、ここまで書けるのは、現場に行っているからである。グーグルマップを見て、ここからの風景を見ることができたとしても、高台まで上がる階段のツラさや、海風の心地よさは絶対にネットでは感じることができない。
そういう、ネットではわからないことを「感じる」ために現場に行くのが「取材」だと私は思う。
取材は、単に写真を撮ったり、取材先から話を聞くためだけに行くのではない。それだけならば、写真は送ってもらえばいいし、話は電話で聞けばいい。けれど、わざわざ私たち取材する側が足を運ぶのは、そこにある何かを「感じ取る」ためだと、私は思っている。
旅も然りだ。飛行機に乗ったり、重たい荷物を運んだり、道に迷ったりすることがあっても、そこに行かなければわからない何かを、五感を使って「感じる」ために行く。
「Don't think, Feel」「考えるな、感じろ」と言った有名人がいたが、まさに、取材も旅も、そのためにある。だから、リアルに足を運ばなければならないのだ。