今さらながら、取材というのは「アウトプットのためのインプット」なのだと思う。
原稿を書くために、取材先から話を聞く。確かに、いつも「この原稿には、こういう情報が必要だな」と思いながら、必要な情報を引き出しているのだが、それが無意識なのだと思う。
ランダムに話を聞いているように見えるのは、頭の中の原稿の通りではなく、先方が話しやすいことから質問しているからだ。
それは、バラバラに集めた材料を組み立てて、建物を建てるのに似ているかもしれない。建物を建てる時は、鉄骨、木材、窓となるガラスなど、一見するとバラバラなものを組み立てる。でもそれらは、建物という完成形をイメージして集められる。完成形の元になるのが設計図だ。
原稿を組み立てる場合、建物でいうところの設計図となるのが企画書である。設計図や、完成形をイメージさせるパースにも近いかもしれない。企画書がない場合でも、私たちの頭の中には無意識に、完成イメージの原稿がある。
ところで、画像は私の友人でもあるイラストレーター「あずみ」さんが描いてくれた、私の似顔絵だ。画像に日付があるように、7年余り前に初めて会った時に描いてくれたものだが、私はあの時のことを鮮明に覚えている。
なぜなら、初めて会ったというのに、1本の筆ペンだけを使い、本当にあっという間に私の顔を描いてくれたからだ。素晴らしい技術だと思った。
私にとってのアウトプットは、原稿という文字だが、彼女たちにとってのアウトプットは、イラストや絵なのだ。きっと私の顔を見た時に「この人の顔は、こんな風に描こう」という完成イメージが頭の中に浮かんだのに違いない。
彼女たちもまた、アウトプットのためのインプットを日常的に行っているのだと思う。