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「これからの本屋読本」と、これからの私

「本は斜陽産業だといわれる。だからといって、本に携わることをやめたら、本当に終わってしまう」

これは昨日、7月10日にTSUTAYA三軒茶屋店で行われたトークイベントで、「これからの本屋読本」(NHK出版)の著者である内沼晋太郎さんが仰った言葉だ。

 

これが、私の心にズシン、ときた。

 

私はここ数年、ビジネス雑誌の記事を担当させていただいており、「斜陽産業」といわれる業界の店や会社も取材をさせていただいた。国産アパレル、日本酒、和菓子など、昔ながらの職人が携わってきた業界が多かったと思う。

 

取材に応じてくださったみなさんは、異口同音に「斜陽産業といわれていますが、それでもチャンスはあります」ということを仰って、試行錯誤と模索を続けている。だから、V字回復とまではいかないまでも、少しずつ元気を取り戻している業界もある。

 

「周囲からいろんなことをいわれながらも、前向きなチャレンジを続けるのは、想像以上に大変だろうな…」どの業界を取材しても、いつもそう思っていた。当事者からお話を伺っていたわけだが、取材している私は第三者の目線だから、どこか他人事だった。

 

そして、昨日のトークイベントである。このイベントには、内沼さんの他に、TSUTAYA三軒茶屋店の方と、三軒茶屋で「猫本」だけを集めた本屋「Cat's Meow Books」を営む店主さんも登壇された。

このイベントに私は、仕事で行ったわけではない。単なる「本好き」として、完全なるプライベートで伺った。しかし、それぞれの立場で書店や本屋について語る姿を拝見するうちに、自分も関わっている業界が「斜陽産業」といわれているにもかかわらず、私はその現実から目を背けようとしていたのだと気がついた。

 

ライターが関わるのは、本だけじゃない。ウェブだって、電子書籍だって、まだまだ生き残る道はあるさと、私は吞気に構えていた。でも、そうではない。内沼さんによれば、それらも「本」である(なぜ本なのかは、同書の第2章「本は定義できない」をお読みいただきたい)。そうすると、私の仕事そのものが斜陽産業ということになる。自分で自分の業界を応援しなくてどうするんだと、心底そう思った。

ここで、内沼さんが書いた「これからの本屋読本」の一節をご紹介したい。

“これからの「本屋」の仕事は、本をできるだけ誠実に選ぶことだ。できるだけアンテナを張る。わからないことには無理に手を出さない。(中略)誰も完璧であることはできない。できていないことも自覚しながら、少しでも誠実な場を提供することで、客との信頼関係を築いていく。”

この一節に出てくる「本屋」を、私は自分にも当てはめて考えよう。物理的な「本」だけではなく、情報を「誠実に」選び、言葉を紡いでいきたい。